虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

父との離別、そして再会(2)

そんなある日、突然、父から手紙が届いた。母も私もそれまでまったく連絡がなかっただけに飛びあがって驚いた。手紙は、来週神戸に船で帰るから迎えにきてほしいという内容だった。

小学校一年の時に巣鴨プリズンに戦犯として収監されてから、小学校六年になるまで、ずっと家にいなかった父が帰ってくる。私は、本当にうれしかった。まさに夢を見ているようだった。戦後、ずっと苦労した母も、この時は本当にうれしそうだった。父がいる時は大使館の関係もあって食料にはまったく困らなかったが、この数年間、父がいなくなってからは配給にも苦労したし、いろいろな支払いも滞納していた。

さっそく、神戸に迎えにいくと、父はボストンバッグ二◯個ぐらいを船に積みこんで帰ってきた。そのバッグの中には最新の医療器具がぎっしり詰められ、山ほどのペニシリンとアスピリンではちきれんばかりだった。

神戸の港に帰った父の第一声は「豆腐が食いたい」だった。西神田の実家の隣が豆腐屋だったこともあり、父は豆腐が大好物だったのだ。その豆腐を母が探したがどこにも売っていなかった。そこで日本旅館に泊まりたい、というので何日か神戸の日本旅館に泊まった。旅館にはさすがに豆腐があって、毎晩、うまい、うまいと豆腐ばかり食べていた。その時の表情は、本当におだやかないい顔をしていた。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

五年越しの悲願

ゴングが鳴った瞬間、私はこの「夢のストーリー」は完結していた。

アリをめぐって自分が闘ってきた数年間が、ふっと思いだされれくる。

やはり人生そのものが芸術なのだ。

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