劇画家畜人ヤプー「宇宙帝国への招待」編

劇画家畜人ヤプー「宇宙帝国への招待」編

劇画最新版発刊に寄せて一一一残念ながら名乗り出て・・・天野哲夫(沼正三):1982年11月15日・記

文藝春秋社『諸君!』誌十一月号(1982年)に、森下小太郎君筆名による「『家畜人ヤプー』の覆面作家はK氏である」とのスキャンダラスな暴露記事が、突如、一大スクープの形で特報された。暴露者は森下君であるが仕掛人は同誌編集長の堤堯君である。三、四の週刊誌その他が連動してこの件を取り上げたが、大方の判断するところは「ヤブの中」。特に『朝日新聞』十月九日付夕刊では、「なぜ匿名で書かれたのか」の(超)氏の記事が、『諸君!』誌の心なきセンセーショナリズムを格調高くたしなめている。

『諸君!』誌十二月号に第二弾。マスコミの反応が何故かひとつ盛上りを欠くので、これにいきり立つように躍起になっての挑発であった。だが、これには、いっさいのマスコミは沈黙。身内であるはずの『週刊文春』ですら無視した。

代理人・天野は沼正三本人であるかの如く、ないかの如くに振舞い来たっていたが、本当の作者はK氏であると公表されるや、慌てて、自分こそ真の当人であると、正式に名乗り出たが、これは真っ赤な偽りであり、やはり、紛れもなくK氏こそが真の筆者である---というのが『諸君!』誌の主張である。なるほど、私には取り立てての学も才もない。片やK氏は、歴とした学歴と博学多識、立場上も実績もエリートにふさわしい人であるには違いない。いくつもの証拠品らしい私信を公開し、これで証明がつくと『諸君!』誌は大声を上げる。

ニセモノであることが赤裸に暴露された私は、ただただ畏れ入り恥じ入らねばならないところであろう。これはM的心情からすれば、逆に有難い一種の法悦とも言える。一方、どうせ世の中、ニセモノだらけ、ニセモノ比べに、やわかヒケは取るまじ、の自負も湧く。本当はそうでありたかったが、累がK氏に及ぶとなれば、そうもいかないのである。『諸君!』誌がいくら力説しても、残念ながら、実際、いちばん残念なのは私本入であるが、『家畜人ヤプー』の筆者は私自身であることを、悔しいながら明記せざるを得なくなったのである。

・・・続く