『家畜人ヤプー』:幻冬舎(アウトロー文庫)

逆ユートピアの栄光と悲惨・・・5

一九六X年のある日、日本青年瀬部麟一郎と、その婚約者たる美しいドイツ娘クララ・フォン・コトヴィッツは、ふとした偶然から故障を起こして不時着した、未来世界からの航時機に乗りこむ羽目に陥る。ふたりを乗せた航時機が帰還した先は、二千年後の未来空間に存在するイース宇宙帝国であった。さて、そのイース宇宙帝国とは、そもそもいかなる場所であったか?それは、二十世紀後半、世界第三次大戦の結果として起こる世界絶滅の混乱時に、宇宙船を駆って人馬座(アルファ・ケンタウリ)の星圏の一遊星に脱出を果たした白人(イギリス人)たちが、そこに建設した宇宙帝国の裔(すえ)である。

帝国の版図は無数の遊星に及び、その住人たちは、航時機を操って、あらゆる時間帯へ自由自在に入りこむ。高度の文明を有し、完全な女権制社会を形づくるその帝国は、厳格な階級制度(ヒエラルキー)によって律されている。最上位には、王族、貴族、平民から成る白人の階層があり、次に、白人に対する無条件の服従と奉仕を義務づけられた黒人の階層がある。そして、その黒人より

もさらに下層にあって、奴隷と言うよりも寧ろ家畜、道具化された生物が、「家畜人ヤプー」なのだ。白人は、神として黒人やヤプーの上に君臨し、かれらから絶対的信仰の対象としての尊崇を受けている。白人---黒人---ヤプーの間の序列がどんなに激烈なものか、それは、その摂取物と排泄物の連鎖機構を見るだけで一目瞭然である。

そこでは、白人の排泄物が黒人の酒や栄養源となり、さらにその黒人の排泄物がヤプーの栄養源となっている。その荒唐無稽を笑ってはいけない。著者はそれを説明する「第六章2 三色摂食連鎖機構(トリコロル・フッドチェーンシステム)」に原稿用紙二十枚の余を費し、あまつさえ、そこにはカロリー計算や化学式まで用意されているのだ。

・・・次号更新【逆ユートピアの栄光と悲惨:家畜人ヤプー解説(前田宗男)より】に続く

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