茅総長”バット殴打事件”の真相(1)
問題は第三のAA諸国大使演説会である。AA諸国と銘打ったものの、私は初めから、呼ぶのはキューバ大使、ガーナ大使、インド大使の三人と決めていた。なかでも眼目はカストロ、ゲバラによって革命政権が成立したキューバ、それにアフリカの新興独立国の代表としてのガーナ、この二つだった。インドは、まあ、いわばアテ馬のようなものだ。
プランの段階で、許可を求めるため、茅総長に説明した。
「どんな国を呼ぶのかね」
「はあ、インドなどです・・・・・・」
私はキューバ、ガーナなどとは一言も言わなかった。茅総長はこの私のワナにまんまと引っかかってしまったのである。茅誠司という人物は他の学長などとくらべても数段、善人なのだが、善人過ぎるというのも、時として困りものである。
一週間過ぎた。五月祭のプログラムが印刷されてきた。ほどなく茅総長が慌てて企画委員会に駆けつけて来た。
「キューバは困る」
と、言うのだ。
学内はまだ平穏で、後の東大闘争の気配も見えなかった頃だ。総長に学生がたてつくなどというのはもってのほかだった。しかし、私はこのプランを立てた当初から、これを利用して五月祭をもうひとつ盛り上げようと考えていたのである。茅総長にはお気の毒だが、すべて、私の思うツボだったのである。だから、茅総長が企画委に飛んで来たときには、シメタと心の中で叫んでいたのだ。
「理由は何です。なぜいけないんですか」
「いや、とにかくね、キューバだけはやめてほしいんだよ。総長としてお願いする」
「しかし、すでに相手国側のOKを取ってあるんですからね、今さらキューバにだけ、来なくていいなんてことは言えやしませんよ。そんなことをしたら国際信義に反することになるんじゃありませんか。しかも、明確な理由もないんではなおさらです」
「キミは、しかし・・・・・・だいいち、ぼくはキューバのことなんか聞いてなかったんだよ」
「インドなどと言ったはずですが」
「・・・・・・・・・・・・」
「なぜインドがよくて、キューバがいけないんですか。これはキューバ政府に対する大変な侮辱です」
「・・・・・・・・・・・・」
さあ、これで学内が一気に騒然としてしまった。何か、ことあれかしと待っていたわけでもないだろうが、代々木系の連中は騒ぎ出すは、反代々木系の連中は茅総長の退陣を迫るはで、学校中が興奮の渦に巻き込まれてしまった。
五月祭の雰囲気盛り上げ作戦は図に当たったわけだ。
・・・・・・次号更新【茅総長”バット殴打事件”の真相(2)】に続く
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