拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」・・・2
上杉 無神論者だって仰っているので、宗教は関係ないわけですけど、まだ最終段階ではないっていうのがおもしろいと。
康 (笑)
上杉 虚業と宗教の話を書かれていたのはその通りだと思うんですが、実業に近いといっては何ですけど、呼び屋ということで本来の仕事と違う方向に行かれたとありますが、そこからずれた後のほうが僕なんかはすごくおもしろい。
康 ずれたとはどういうこと?
上杉 ネッシーとか。
康 あれは虚実皮膜の間だから。
櫻木 退屈しのぎって言ってましたね。
康 僕はあんまりわからないんだよ。無神論と唯神論の区別が。
櫻木 改めて言われるとうちは浄土真宗ですけど、じゃあ無神論か唯神論かと言われると。
康 君だって唯神論になるときもあるだろう。
櫻木 はい。
康 そのボーダーがよくわからないから教えてもらいたい。
上杉 僕は前に末井さんの雑誌で植島啓司さんという宗教学者と「境界線上の人々」という連載をやったんですけど、犯罪とか薬物中毒とか、裏社会とか。康さんがやってらつしゃる虚業と実業のはざま、虚実皮膜の間といいますか、そうした境界線上を行ったり来たりするのが一番おもしろいと思いまして。
康 おもしろいといえばおもしろいんだけど。いわゆる「マージナルパーソン」ということなのだが、精神病理学者、宗教学者もふくめて、この問題はもう一つ、つっこみが足りないね。ブラックホールをさまようのがこわくてみんなある時点で踏みとどまつている。
上杉 規模の問題はありますが。
康 規模に関わりなくおもしろいんだけど、社会自体がフィクションだから。虚業が実業かといえばそれも難しい問題ですよ。みんなレッテル貼られちゃうから。あんまり分けちゃうとね。はっきり処理しない方がいいかなと思うし。
上杉 境界というか。
康 虚業と実業のね。
南 みんなそういう仕事をしてるわけでしょ、結局。
康 まあいいんじゃない?伸坊なんて虚実皮膜の間の最たるものじゃない。
・・・以上、拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」:Fukujin N0.11 2006 より抜粋
---
福神研究所(ふくじんけんきゅうじょ)Twitter
『Fukujin ~漬物から憑物まで~』明月堂書店
---