『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

官邸地下壕で行なわれた”偽りの結婚式”(1)

「なぜ、アロイスニ世の娘を、自分の愛人のように装わせたのですか。自殺したゲリ・ラウバルの時と同様、ひじょうに近親相姦的なものを感じさせますが・・・・・・」

「違う。これは後に説明するが、『ヨハネの黙示録』の第一三章に登場する『けもの』の存在を考えてのことなんだな」

川尻博士は机の上の分厚い聖書をひろげ、『ヨハネの黙示録』のその部分を示した。

「"我また一つの獣の海より上がるを見たり。これに一〇の角と七つの頭とあり・・・・・・”と描写されている獣のことですね。最後の”心ある者は獣の数字を数えよ。獣の数字は人の数字にして、その数字は六六六なり”というのが、特に有名ですけど」

「うむ。実体のヒトラーは、特に『ヨハネの黙示録』を自分の行動の指針と見なしていた。そうすると、彼の周りに、この『けもの』の関係がなければならない。このような関係をつくるため、複雑な操作が行なわれ、エバ・ブラウンが選ばれたと見るほうが、歴史の見方としては正しいと私は思うね。実体とエバ・ブラウンの出会いは、けっして偶然ではないのだ」

博Lは自信たっぷりに言ってのけた。

・・・・・・・・・次号更新【官邸地下壕で行なわれた”偽りの結婚式”(2)】に続く