虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
ガラクタの生命力・武者小路実篤に会いに行く(1)
当時の歌舞伎町は、いまの風林会館から職安通りに向かって裏側の一帯が進駐軍相手の連れこみ宿だった。けばけばしい化粧をした進駐軍相手の「ヨウパン」と呼ばれる売春婦が客引きをしている。倒れそうなバラック建ての連れこみ旅館の窓から、ヤンキーと売春婦のわけのわからぬ嬌声やあえぎ声が聞えてくる。進駐軍の兵隊が、闇で流すチョコレートやウィスキーをジープに載せて運んでいく。そんな荒廃した街をふらつきながら、我々は新宿二丁目の赤線地帯へと向かい、四〇〇円ほどで女を買っていた。
けんかも毎日のようにした。高田馬場にあった朝鮮高校や隣にあった保善高校とは、中学、高校としょっちゅうトラブルを起こしていた。石の投げあいで頭に大きな石をぶつけられ頭がおかしくなったやつもいた。保善はラクビーが強く体のでかい猛者がいっぱいいて、けんかも強かった。当時、直接の接点はなかったが、作家の安部譲二がこの学校に通っていて、彼の噂は悪餓鬼仲間では知れわたっていた。のちに彼は私をモデルにして『欺してごめん』(クレスト社)を書いている。彼は名門麻布中学から慶応高校に進学したが、そこを退学させられ保善高校に転校してきたのだ。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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謎のプロモーター
康芳夫は、稀に見る異能の男だ。
執筆に際して、取材し資料を調べるうちに、康芳夫の他に類のない、雄大にして奇抜な発想を知った私は、感嘆してこの男こそ天才の名にふさわしいと、信じるに至った。
異相の呼び屋・康芳夫:「欺してごめん」安部譲二:『謎のプロモーター』
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