家畜人ヤプー【ポーリンの巻】より

日本神話を脱構築する:畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之・・・その14

脱構築される日本神話。ここでさらに沼正三の省察を生かしているのは、彼が神話上の神々を単一の種族に限定していない点だ。ヤプー立国イースの成り立ちは、たしかにアルフレッド・ローゼンバーグの『畜人論』の応用とヤプー的無意識に内在していた白神崇拝傾向の搾取に求められる。白人が日本人を家畜とみなすのは、それ以前の段階で日本人内部に白人崇拝志向があるかぎり理の当然というわけである。げんに著者は完結編のあとがきで現在日本を射程に、痛烈な皮肉を放ってみせた。「まあ、ポスト・フェミニズムのヤングレディ---温良貞淑な夫に家事育児を任せ、自分は外泊して金髪青年に抱かれている某人気歌手の女性上位の生き方に喝釆する女性たち---は、白人志向の<脱日本民族>心理からイース貴婦人に容易に同化し、平気でヤプーを使役するだろう・・・・・・」(完結編、六五八~六五九頁)。しかしここで注意しよう、先に見たとおり、天照大神(アンナ・テラス)と須佐之男命(スザン)が白神であるいっぽう、じっさいの『古事記』ではふたりの親格にあたる伊邪那岐命(サナギー)と伊邪那美命(サナミー)はといえば、まぎれもない実験用ヤプーとして性格づけられている。日本神話の神々内部において、沼正三はすでに「高天(たかま)の原」/「芦原の中つ国」の地政学を基準に、白人か日本人かの差異化を図っているのだ。げんに彼は、「タカンマハール星居住のオヒルマン家所属八百万匹のヤプー」に言及するさいに、こんな注釈を施している---「大貴族家は一領地でもこのくらいの数を使役している、読者諸君に、今さら『八百万(やおよろず)の神々』について説く必要はあるまい」(正編、五五六~五五七頁)。また、神話でいう天照大神は須佐之男命の地上への追放に一役買い、『古事記』では「八百万の神共に議りて、速須佐之男命に千位(ちくら)の置戸(おきど)を負せ、また鬚を切り、手足の爪を抜かしめて、神逐(かむや)らひ逐らひき」と記述されているけれども、それについてアンナ・テラスが、ヤプーたちがスザンをそう解釈したのは「自分たちの風習からして、(鬚を切り、手足の爪を抜かれた格好は)何か罰を受けて追放されたんじゃないかと疑った」帰結であると断じている部分も見逃がせない。つまり、女性であるスザーノに鬚がないのは当然としても、この仮定における「八百万の神」もまた、ヤプーたち自身を指しているのは明白であるからだ。

・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之 より・・・続く

−−−

家畜人ヤプー倶楽部

#家畜人ヤプー #サロン プロジェクト 始動!! #家畜人ヤプー倶楽部 (Executive Producer #康芳夫 )快楽と興奮が交差する場所 家畜人ヤプー倶楽部

Modern Freaks Inc. Presents『家畜人ヤプー倶楽部』Executive Producer 康芳夫 お申込ページ

あれこそは戦後最大の傑作だよ。マゾヒズムの極致を描いたまったく恐ろしい小説だ #三島由紀夫

−−−