家畜人ヤプー【ポーリンの巻】より

”沼正三”会見記(1991年12月)共同通信 文化部 小山鉄郎(現 共同通信 編集委員)・・・3

「平凡社の『現代人名情報事典』には沼正三、本名天野哲夫と載っていますけれど、自分からはっきり当人だと明言したことは一度もありません」と天野さんは言う。「当初は沼正三さんの代理人という形でしたが?」と聞くと「今も代理人です」という。

『家畜人ヤプー』(正編)の「はしがき」には完結編執筆について「作者としては、当初から続編を書くつもりでいたのであるが、それを拒んだのは、沼正三というペンネームの本人探しということで、知人ではあるが作品とは無関係なK氏に累が及ぶことを危惧したためであった」と記してある。天野さんはこのK氏が倉田卓次さんであることを認めた上で、複数説についても、「積極的にいろいろな部分について取材に応じてくれた人も一人二人います」。倉田さんがそういう助言をしてくれたことは「否定しません」。

匿名性を保とうという著者に対して、その仮面を剥ごうという行為はあまり、愉快な行為ではない。著者が死んでしまえば作品に込められたものしか残らないし、作品だけが残れば十分とも言える。だが、みな生きているために、そこの場所だけに止まることができない。私も沼正三は誰なのか知りたいし、代理人も匿名の周辺だけにとどまってはいない。

・・・次回更新に続く

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