沼正三のプロペラ航空機:劇的な人生こそ真実(萩原朔美:著)

劇的な人生こそ真実―私が逢った昭和の異才たち

沼正三のプロペラ航空機・・・1

都市出版社版『家畜人ヤプー』(1970年発行)

『家畜人ヤプー』(都市出版社版1970年):沼正三(ぬま・しょうぞう):1926(大正15)年福岡生。小説『家畜人ヤプー』は戦後最大の奇書と言われる。長らく作者の正体は不明だったが、のちに新潮社校閲部に勤務する天野哲夫だったことが分る。沼正三名義で『ある夢想家の手帖から』都市出版社、『マゾヒストMの遺言』筑摩書房。天野哲夫名義で『勝手口から覗いた文壇人』第三書館、『わが汚辱の世界』毎日新聞社、『女主人の鞍』第三書館など多数。2008年死去。享年82歳。

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奇書と言われた。

戦後文学のナンバー・ワンと鮎川信夫が言ったとか、澁澤龍彦が絶賛したとか、とにかく話題が話題を呼び寄せた本。

それが沼正三の『家畜人ヤプー』だった。当初作者は正体を現さず謎のまま。一体誰が書いたのか、それも話題のひとつだった。グループで書かれたという風説もあった。元判事の倉田卓次ではないかとか、三島由紀夫が関与していたとか憶測が渦を巻いて迷走した。

私は、その沼正三と本が出版される以前に会った。

その後、『家畜人ヤプー』が出版されると、銀座のクラブで著者不明のまま出版記念パーティーが開催され、そのイベントの演出も引き受けた。沼さんに頼まれたのである。

・・・次号更新【沼正三のプロペラ航空機:劇的な人生こそ真実(萩原朔美:著)より】に続く

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