虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
契約書との格闘(1)
私は「アートフレンドアソシエーション」に入社し、日本橋のオフィスに出勤した。社員は三◯名程度の会社だった。企画部とか営業部、総務部とかがあって、東大出の社員は私以外にもうひとりいた。企画部長の木原啓充で、元共産党員の詩人くずれの非常に変わった魅力的な人間だった。
会社の雰囲気は当時もっとも流行の先端を追う企業としての華やかな熱気に満ちていた。しかし、社員の視線はどこか私に対して、冷たいものがあったのも事実だった。これは、私なりに冷静に判断すると、彼らの私に対する嫉妬心だったような気がしている。
神彰は、中学(旧制)しか卒業していない。その後、絵描きをめざして挫折し、いろいろ経験した後、株の相場師を経て呼び屋として成功をおさめたのだ。だから、彼には独特の「学歴」および「文化」コンプレックスがあった。さらに、有吉佐和子の紹介ということもあって、彼は私に何かと目をかけて可愛がった。これに社員たちは嫉妬したのだろう。しかし、元来、そのような瑣末な事象を気にかける私ではない。
学生時代の数々の武勇伝や五月祭を仕切った私の噂を石原慎太郎から聞いていたのか、彼は私を非常に信頼してくれていた。そして彼の信頼は入社早々、無謀とも思えるほどの仕事を私ひとりにまかせてきたのだ。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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— 康芳夫(国際暗黒プロデューサー) (@kyojinkouyoshio) February 16, 2016
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