虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

契約書との格闘(2)

入社して一か月もたたない頃、神彰は私を呼びだしてこう言った。「康君、ジャズプレーヤーのソニー・ロリンズって知っているか。ナンバー1のサックス奏者だ。今度、彼を呼ぶ。君に契約から何からすべてをまかせるからやりなさい」。先に書いたとおり私はジャズが大好きで、もちろんロリンズの大ファンだった。

しかしながら仕事には自信があった私もいきなり契約書のひな型を見せられて、さすがに首をひねった。専門用語の英語がさっぱりわからない。当時はまだ国際弁護士なんていない時代だ。さすがの私も少しためらっていると、「おまえはいちおう東大を出ているんだろう。これぐらいだいじょうぶだろう」と私に向かって言うのだ。相変わらず負けん気の強い私は、その言葉にムカッときて「よし、そこまで言うならやってやろう」と仕事を受けることを決めたのだ。

この頃はまだ、ファクスやメールなどない時代だ。ニューヨークとのやりとりは電話とテレックス。

英語には多少自信があったが、プロの契約書は専門用語だらけでまったく歯が立たない。おまけに相手のやり手マネージャーにはニューヨークの優秀な弁護士がバックにひかえている。電話で話した内容をテープに録って家に帰って巻きもどして翻訳してと、毎日七転八倒の思いでとりくんだ。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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