激励してくれた福田、知らなかった田中（4）
話はとぶが、私がネス湖探検をし、非難を浴びている最中に、ちょうど、田中総理が英国を訪問していた。記者会見が行なわれ、その席で、ある英国人記者が、「ネッシー探検隊を貴殿はいかが思うや」と聞いたそうである。
ところが田中総理は、ネッシーのネの字も知らない。キョトンとして答えが出ない。慌てて隣にいた真紀子さんが耳打ちして教えたという。
ほんとうだとすればおもしろい話だ。
同じく総裁選を戦った二人だが、一方はネッシーに興味を示し、四十年前の夢を今も覚えているロマンチスト、一方はネッシーの何たるかさえ知らないリアリスト。ずいぶん隔りがあるものである。
福田氏の話には後日談がある。
ネス湖探検から帰るとき、私は、福田さんへおみやげとして、スコットランド名産のカシミヤのマフラーを買って来て届けさせた。正直言って悪いものではないが、それほどのものでもない。
ところが、数日しないうちに、福田さん自筆の礼状が届いたのだ。ハガキで簡単な文面であったが、なかなかできることではあるまい。
《御活躍お喜びしています。過日は英国マフラーを、わざわざ御贈り下され、有難うございました。予算編成など昼夜、追いまくられ御礼立ち遅れました。よきお年を。十二月三十日 福田赳夫》
・・・・・・次号更新【厳しい許可条件】に続く
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