虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

最初のゲートをくぐった−−−ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキー(2)

当時、毎日新聞に「論壇」という欄があってそこに私は、台湾政府を批判する内容の記事を書いた。これは、一般読者の投稿欄ではなく、大学教授やそれぞれ専門分野の人たちの投稿欄だった。そこで、当時、台湾政府がやっていた言論弾圧や恐怖政治的な活動を批判した。その内容がおもしろいと、編集委員の目にとまり掲載されたのだ。

そんなことはすっかり忘れていた私はさすがに驚いた。その男は台湾の特務員、日本でいう公安でつまりスパイだったのだ。私は彼に「君は台湾政府を理解していないのに、調子に乗っていいかげんなことを書いてはいけない」などと反論の余地もなく説教を垂れられてしまった。

数か月後、まだ明らかにはできないいろいろな裏の手を使ったりして結局パスポートは発行されたのだが、こんなことがあってニューヨークまでのチケットやホテルの予約まで済ませていた最初のアメリカ出張は急遽中止になってしまった。

何とかテレックスや電話で最後の交渉契約まで済ませて、ようやくソニー・ロリンズ一行は羽田に到着することになった。私は羽田に迎えにいった時、何か少しばかりの感動を憶えたのを記憶している。まだ、これから公演を控えていて、仕事は終わっていないのだが、とにかくこれから私が呼び屋の仕事をスタートする最初のゲートをくぐったような興奮を感じていたのだ。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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