戦後の文学界に衝撃 マゾの奇書「家畜人ヤプー」覆面作家は高裁判事 東大卒のエリート

「家畜人ヤプー完結版(ミリオン出版)」より---沼正三・・・2

「あしざまに国をのろひて言ふことを今の心のよりどころとす」(迢空『倭をぐな』)。国を呪い天皇を恨みつつ、男女の逆転と人種差別とを立国の原理とした美しく厳しいイース国に拉致された私は、<うつし世は夢、よるの夢こそまこと>(乱歩)、そこを畜生天と悟入し、日本人なるが故に酷く処遇される地獄を極楽浄土と観じるようになったのだが、最後の瞬間に、麟一郎のように浄土に残留する勇気がなく、のめのめと<世紀末の地球>に戻ってきた。

その私の目には、日本は四十五年前と同様、米国の傘の下の事実上の属国と映る。捕鯨や象牙輸入で責められた動物虐待、熱帯雨林伐採による地球環境汚染、そしてコメ・談合など国内市場の閉鎖性・・・・・・そういう<日本叩き>に対して「欧米的文化基準を押し付けるな」と息巻きながら結局捕鯨も象牙も諦め、「内政干渉だ」と反搬しつつもしぶしぶ経済のインフラを改めた。正不正の基準は常に欧米にある。いや<真善(特に)美>の価値基準も西洋にあるからこそ、万事に欧米の流行を追い、怪しげなカタカナ語が氾濫し、テレビのコマーシャルの半ばは「白人」男女に占領されている。昔の欧米植民地並みだ。多少健康に害があっても、一度飲めば肌色・髪色が一生白人並みに変わる薬がもしできたら、一番先に買うのが米国の黒人でその次は日本人だ、という心理分析統計もあるとか。・・・・・・この白人崇拝は、一度無条件降伏して土下座した民族の、米兵の投げるチョコやガムを拾って育った人たちの、無意識に潜む劣等感の表われだろうか。

・・・次号更新【「家畜人ヤプー完結版(ミリオン出版)」より---沼正三】に続く

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