『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著) 精神科医 川尻徹

滅亡のシナリオ(5)

いまも着々と進む1999年への道

これが、”麻原オウム”幹部必読の教科書だ!

1章 いま明かされる”ノストラダムス計画”
---第二次世界大戦は”ヒトラーの第四帝国”建設への布石だった!

◆三〇年の臨床体験から確信した予知力の存在

その週末、中田信一郎は東京郊外にある川尻博士の病院を訪ねた。都心から車で約二時間、ハイヤーは市街地を過ぎると丘陵地帯に入りこみ、やがてまったくの山の中という感じになった。空気はひんやりとして心地よく、緑はいっそう濃い。

病院の看板があったところから舗装路を外(はず)れて少し行くと、少し高台に位置して建てられた病院の建物が見えてきた、精神病院というと、高い塀(へい)に囲まれた灰色の、鉄格子のついた陰気な建物を想像するが、この病院は開放的な雰囲気が感じられる建物だった。

広い玄関を入ると、週末の午後の病院は森閑(しんかん)と静まりかえっていた。

「どうぞ、こちらへ」

受付にいた看護婦が、丁重(ていちょう)に中田を院長室へ案内した。

白衣からは微(かす)かに消毒薬の匂いがする。

院長室は、山間に開けた田園風景を見下ろす二階にあり、壁の書棚には、医学関係の書物がひしめいているが、どこか文学者の書斎めいた、落ち着いた雰囲気の洋室であった。

「やあ、よく来たね。君のことはK・H氏より聞いているよ」

迎えてくれた川尻徹博士は、五〇代の半ばという年齢で髪は黒々として恰幅(かっぷく)がよい。医学者というより、もう少し野人めいた風格を備えていて、容貌は温厚だが、眼光は炯々(けいけい)と光っている。中田はさっそく、用件に入った。

「お邪魔します。実は、先生のノストラダムスとヒトラーのご研究を、もう少し噛みくだいてお話してもらおうと思いまして・・・・・・。”随想”は読んだのですが、歯が立たないものですから」

「そんなにむずかしかったかね・・・・・・」

ロング・ピースに火をつけて一服した博士は、ゆったりと肘掛(ひじか)け椅子にもたれて紫煙(しえん)を吐く。灰皿には吸殻が山のようになっていた。どうやらヘビー・スモーカーらしい。

「それにしても、医学者、それも精神科医である博士が、ノストラダムスに興味を持っているなんて、意外ですね」

博士は微かに苦笑した。

「まぁ、日本ではノストラダムスに限らず、予言などという胡散臭(うさんくさ)いものに知識入が手を出すものではない---という風潮があるからね。しかし、精神科医として三〇年ちかくも患者と接した体験から、私は人間にはもともと予知能力が具(そな)わっていると確信するようになったのだよ」

・・・・・・・・・次号更新【ラングーンのテロ事件は予言されていた!】に続く

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