『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・3【新潮(2009年2月より)】

『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・新潮(2009年2月)

『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・新潮(2009年2月)

昭和45年、「血と薔薇」に続編を掲載した翌年、僕と矢牧ー宏がつくった都市出版社という会社で単行本にしました。そのころ僕はモハメド・アリの招聘なんかと同時進行でやってました。

刊行は大々的にやりましたよ。僕がプロモーターですからね。ところが発売から一年足らずで、都市出版社が右翼に襲撃されたんです。「康が宣伝のために仕組んだんじゃないか」って言われたけれど、そんなことはない。仕組もうと思っていたら、その前に本物が来ちゃった(笑)。右翼は逮捕されて、そのあとにお礼参りがあって、それも逮捕された。そのいきさつを朝日新聞がスクープして、週刊新潮が大きな記事を書いたり、NHKがニュースで流したりして、えらい騒ぎになっちゃってね。朝日の記事を書いた記者は佐々淳行の兄貴で、矢牧君の成蹊高校の同級生。実はわれわれの仲間だったんですけどね。

余談だけど、王貞治君が新宿の御苑に面したビルを持っていて、僕は王君をよく知っていたんで、その一階を借りて、「家畜人ヤプークラブ」つていうのを作ったら、これがめちゃくちゃに流行ってしまって(笑)。遠藤周作、吉行淳之介、立原正秋なんかが銀座からホステスを連れてきてましたよ。ところが、そこが盛り上がりすぎて、すさまじいことになりましてね。SMプレーで客が半殺しになって、警察がきちゃった。結局、半年で店を閉めましたがね。

・・・次号更新に続く