ラスベガス暗黒街のボス・トニー(1)
私は、ただちに行動を開始した。
しかしエルヴィスの場合はもちろんだが、トムの場合も、すでに日本の”呼び屋”八社ほどが六、七年がかりで交渉を継続しつつあったのである。私は、幸か不幸か、それまで音楽の世界には直接タッチしていなかったので、そのことはまったく知らなかった。これが後で、私と、音楽の呼び屋連合軍との大戦闘の原因になるのである。
私は、行動を起こすに当たってこう考えた。トム・ジョーンズほどの歌手なら、当然、一年以上前から、そのスケジュールは決まっているはずだ。そうなると、今から割り込むのには、まともな方法ではとてもムリだろう。
もし、運良く割り込む余地があったとしても、そのためには法外なギャラを払わねばなるまい。二十万ドルか三十万ドル、あるいはもっと多いかもしれない。少なくともクレイと同じように銀行信用状ぐらいは要求してくるだろう。私には金はない。
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クレイ戦でふところに入った億に近い金はきれいさっぱり失くなっていた(その理由は後で書く)。いずれにしろトムにとっては、極東の日本へ来るなどということは効率のいい話ではないのだ。万一、事故でも起こせば元も子もなくなってしまう。敢えて危険を冒す必要はさらさらない。
だが、この段階で投げるようでは、虚業家にはなれない。無から有をヒネり出し、道理を引っ込ませても無理を押し通すのが虚業の商法なのだ。
・・・・・・次号更新【ラスベガス暗黒街のボス・トニー(2)】に続く
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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。
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