銀座、赤坂でのこ乱行(1)

虚業家宣言:康芳夫

羽田での記者会見は大盛況だった。

旅の疲れで、初めブスッとしていたクレイも、VIPルームを満員にした記者たちに気を良くしたか、吹きに吹いた。

記者 相手のフォスターは、「クレイなんか六ラウンドでKO」と言っているが。

クレイ フォスターはオレ以上のホラ吹きだぜ。まあ、日本は二人がホラを吹くには狭すぎる。この拳を奴の口のどまん中に、パイプみたいにブチ込んでやるよ。

記者 何ラウンドで倒すか。

クレイ まあ、五ラウンドだ。もっと早く倒してもいいんだが、遅れてくる客に悪いからな。ウォーッホッホ。

その後の二週間、私はハラハラしどおしだった。

クソマジメなフォスターが、ファイティング原田のジムに通って着々とスパーリングに励んでいるのに、クレイの方は、ほとんど練習をしないで遊び回っている。しても実にチャランポランだ。たまに、

「何時にスパーリングに行くから、車と荷物を準備しといてくれ」

と言われて、うちのクレイ係が準備万端整えて、いざ出発しようとすると、

「疲れているから、今日はやめた」

ある日、突然、スパーリングを中止して、「映画を見たい」と言い出した。渋谷東急の『クレオパトラ』を見に連れて行ったまではいいが、気がつくと、いつの間にかクレイがいなくなっている。

担当者はもう真っ青。

探していると、二階から大きな声で、

「へーイ・ミスター・コオー」

こっちをからかって喜んでいるのだから始末に悪い。

車を自分で運転するのにも参った。アメリカと違い、狭い道路に車がひしめいている日本では、アメリカ流の大まかな運転技術では危険この上ない。万一、ケガでもされた日には、すべてが水の泡ではないか。

「なんとか、車の運転だけはやめてくれ」

「オレは不死身だ」

の一言で、終わりである。取りつくシマもない。

・・・・・・次号更新【銀座、赤坂でのこ乱行(2)】に続く

---

『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。

---